企画委員会委員長挨拶
「船旅ならではの体験で特別な“驚き”と“感動”を」
学校法人東海大学第48回海外研修航海の旅立ちにあたり、研修団の皆さんにエールを送ります。若き日に海外に赴き、人々と交流し、文化や歴史に触れることは、人生において特別な体験です。学園の創立者・松前重義博士も逓信省(当時)の若き技官として第二次大戦前にヨーロッパを訪ね、デンマークの国民高等学校をつぶさに見学して、自らの教育活動への理想を確固たるものとしました。
現代は松前博士の時代とは異なり、海外渡航はもはや一般的で、学生諸君の中にも海外旅行を体験している人は少なくないでしょう。海外への旅行や遊学、留学のスタイルも多様化し、観光の枠を超えた体験型ツアーから手軽で安価なものまで、さまざまな旅が溢れています。
このように海外渡航の選択肢が広がる今日にあって、皆さんは東海大学の海洋調査研修船で海外に旅立つことを希望されました。その決断を心から歓迎し、行動に敬意を表したいと思います。ひとたび出航すれば逃げ場のない大海原で、厳しい自然と向き合い、限られた居住空間でルールを遵守し、責任を負う集団生活にあえて挑む勇気は、必ずやこれからの人生に有益な体験を皆さんにもたらしてくれるでしょう。私も学生時代に研修学生として、また東海大学に奉職してからは研修団役員として海外研修航海に参加しましたが、その体験は本当に貴重なものとなりました。
旅が人生の糧となるのは、そこに「驚き」と「感動」があるからです。そして大切なことは、その「驚き」と「感動」から「何かを学び取ろう」という意識、姿勢を持ち続けることだと思います。
海外研修航海企画委員会では、皆さんのその高い意識に応えるべく、今回も特色豊かな研修プログラムをさまざまに用意しました。中でも、海外研修航海で47年ぶりに訪問する小笠原諸島の父島を訪ねることは貴重な経験となるでしょう。
小笠原諸島は希少な動植物が生息する自然の宝庫です。地球の胎動を実感できる雄大な風景と、環境保護に努める地域の方々と触れあうことで、自然と人間の共生について学んでいただけると思います。また、宇宙航空研究開発機構の小笠原追跡所や国土地理院のVLBI観測局など、最先端の研究施設がある一方で、砲台など太平洋戦争の残骸も未だに目にします。学生の皆さんには、父島の歴史や現況を学ぶことを通じて、人類の平和や科学技術の役割についても思索を深めていただきたいと願っております。
恩師や仲間たちと「驚き」や「感動」を共有し、濃密な時間を共にできるのは、まさにこの海外研修航海ならではの特別な体験です。人々との交流、多様な文化との出会いを経て、皆さんがたくましく成長して帰国してくれることを心待ちにしております。
学校法人東海大学 理事長・副総長
松前 義昭