第35回 海外研修航海
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  「思考の旅へ」

東海大学海洋学部海洋土木工学科教授
団長 迫田 恵三
 
 私はこれまで数多くの国内外の「旅」を経験してきました。全ての旅が印象深いものでしたが、代表的なものを挙げよといわれれば、次の5つを挙げます。

 先ず、最初はインドの旅です。インドへは2回行きましたがヒンズー教の聖地であるベナレスの旅は、私の人生観を変えるほどの強烈なものでした。世界各地にスラム街はありますが、インドの貧しさは形容し難いほどのもので独特の匂いと混雑さもあってか目眩を感じるほどでした。人々がその日の糧を得るために必死で働いているのを目のあたりにして、生きることの意味を考えさせられました。

 2番目の旅は望星丸での海外研修航海です。今からさかのぼること19年前の第16回の海外研修航海でしたが、その当時の船は旧望星丸で設備も現在の望星丸とは比較にならないものでした。当初の寄港予定地はサイパン、ラバウル、ブリスベーン、ポナペでしたが途中の寄港地であるラバウルが火山活動のために寄港できなくなり、サイパンからブリスベーンまで約2週間、水不足でシャワーもままならず、水の大事さが身をもって体験できました。また、船内の狭い空間での生活は自他を強く認識した旅でした。

 3番目の旅は、ノルウエーの北緯60度トロムソでの白夜の航海です。夜中の12時を過ぎても太陽が水平線に沈まない洋上での航海では自然現象の不思議さを感じました。

 最後の旅は、汽車を利用した旅でしたがリスボンからローマまでの地中海沿岸の都市を途中下車しながら日本では経験できない国境を意識できました。
 また、オーストラリアのパースからシドニーまでの3泊4日の大陸横断の旅は、オーストラリアの山1つ無い360度の大平原を見ることができました。これらの旅を通じて最も良かったことは船中や汽車の中で、あるいは公園のベンチなどで色々なことを考える機会に恵まれたことでした。

 旅をするためには、感受性の鋭い若いうちが良いとされています。この意味するところは色々な旅の経験を敏感に受け止め、それを自分の思考や行動に生かすことだと思います。今回、第35回の海外研修航海に参加する皆さんには、考える問題、時間、空間が山ほどあります。見渡せば360度の海原、満天の星、サンゴ礁の島々など思考するにはこれほどいい環境はありません。

 46日の長い航海、安全で快適な航海にするためには色々な人々の協力、支援があってこそできるものです。これらの人々に感謝しつつ、我々研修団役員一同、望星丸スタッフの皆さんとともにすばらしい航海になるよう努力したいと思います。
 
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