団長挨拶
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海洋調査研修船「望星丸」を使用したこの研修航海は、東海大学や東海大学短期大学(部)に在籍している諸君だけに提供された大変貴重な経験です。したがって、この航海に参加できる諸君は大変幸運だといえます。遠く日本を離れ、日常を離れ、船の上での41日間の規律正しい共同生活を自分たちの頭と手で作り上げていくことや、各寄港地での国際交流を通じて、友愛という強い絆で結ばれた多くの仲間を得ることのできる人生の一大イベントになるはずです。<新しい自分へ>と至るまたとないチャンスですので、南太平洋の空気とともに船の中の空気もお腹いっぱい吸い込んでください。
今回の研修航海のコースは前2回の研修航海と同じで、訪問する寄港地も同じ、コロール(パラオ共和国)、ラバウル(パプアニューギニア独立国)、ヌメア(フランス領ニューカレドニア)そしてコスラエ(ミクロネシア連邦)です。ヌメアではニューカレドニア大学への訪問もします。私たちは、これまでの研修団が東海大学の代表として残した交流の成果を受け継ぐとともに、私たちならではの文化交流の足跡を残そうではありませんか。
私はチャレンジセンターの所長をしておりますが、かねがねこのセンターの活動は陸上の研修航海だと感じていました。研修航海では、諸君は何よりもまず自ら考え、自分たちの航海を作らねばならないのですが、そのためには「集い力」を発揮して、留学生を含め、多くの意見や感性の異なる仲間と長い共同生活を送らねばなりません。そして、「挑み力」を発揮して、その仲間たちとともにいくつもの行事を企画し実施しなければなりません。しかし、その過程で、仲間と意見が分かれることもあるでしょう。さまざまな条件がその企画案を許さないということも生じるかもしれません。そのような困難を乗り越えても自分たちの責任を果たし、研修航海を成功に導く。これが「成し遂げ力」です。清水に帰港した時、研修団の全員がこれらの力を身に付けたと実感してもらえるものと確信しています。
ただ、この航海に出るにあたり、諸君に忘れてほしくないことがあります。2年前の3月11日に発生した東日本大震災のことです。現在もなお復興に向けたさまざまな尊い努力が続けられていますが、あの大地震と大津波によって発生した2000万トン以上の瓦礫の処理が難航し、それが被災地のスムースな復興を妨げる大きな要因となっています。しかし、あの大震災が生み出した瓦礫はそれだけではないのです。あの大津波は地上の多くのものを海中に引き込みました。そして現在、推定150万トンもの浮遊瓦礫が海流に乗って太平洋の対岸まで流れているのです。それらは南下して、私たちが歴訪する国々にもいずれ流れ着くかもしれません。いや、もう着いているかもしれません。私たちはこれからしばらく日本を離れますが、望星丸で訪問するのはそのようなところだ、ということを決して忘れないでほしいのです。その意味で日本から遠く離れてはいない<これからの世界へ>日本人として訪れるという自覚を持っていてほしいのです。
私たちを安全に運んでくださる船長をはじめ乗組員の方々に対する感謝の気持ちを忘れることなく、逞しく成長した自分を思い描こう!