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私の大学時代の友人に、星野 道夫という人がいた。動物好き、写真好きの人は名前を聞いたことがあるかも知れない。 |
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第37回 海外研修航海
団長 馬渕 悟
北海道東海大学
国際文化学部
地域創造学科 教授 |
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彼は、世界的に名を知られたアラスカの動物写真家であった。数ヶ月にわたって、たった一人でアラスカの大自然の中で生活しながら、素晴らしい写真の数々をものにしてきた。残念なことに、10年前にカムチャッカで熊に襲われて若くして亡くなってしまった。しかし、現在でも彼のファンは多数おり、毎年全国で開催される写真展は、いつも満員である。 |
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この一文を書くに当たって、何故か彼のことを思い出した。これから南太平洋に向かうというのに、彼のことを思い出したのは何故だろうか。それは、これから私たちが行く地域も、星野君が活躍したアラスカの雪原や雪山とは異なっているとは言え、素晴らしい自然にあふれる地域だからなのだろう。 |
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今回の研修航海の航路の自然は、確かに素晴らしい。これは、誰しもが感じることである。紺碧の海、さえぎるものすらない見渡す限りの海と青空、時として見え隠れする白い砂浜と緑のヤシの生い茂る珊瑚礁。確かに何もかも感動の一言である。 |
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しかし、星野君を思い出したのはそのためではない。彼は、動物写真家としての活動だけでなく、アラスカの自然保護や原住民の文化の保存や育成、日本の子どもたちを招いての厳冬期のアラスカで体験キャンプなど、様々なことをやってきた。そして、日本に帰ると、あちこちでアラスカの自然の素晴らしさを子どもたちに伝えてきた。星野君は、自然を愛する以上に、人間を愛してきたからこそ、素晴らしい写真をものにできたのである。 |
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確かに自然は素晴らしい。けれどその素晴らしさをともに体験し、語り合える仲間がいることは、もっと素晴らしいことである。この研修航海に参加する諸君には、南太平洋の陽光きらめく自然を満喫してもらいたいとも思うが、それ以上に素晴らしい仲間との出会いと結びつきを、築いてもらいたいと願っている。また、寄港地の人々との交流を通じて、異なる文化を肌で感じてもらいたいと思っている。 |
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研修航海は、今回で37回目を迎える。そこに研修学生として参加した2千人を超える先輩たち、そしてそれを支え続けてくれた望星丸乗組員の方々や担当部署の方々など、この研修航海のために、どれだけの方々が、どれだけの時間と労力をかけているかを考えると、気が遠くなるほどである。私たちの航海は、そんな人たちの熱い思いに支えられていることを忘れてはならない。私たちが大きな収穫を得て、無事に帰国することが、そんな皆さんへの最大の感謝の気持ちの表現なのである。 |