「船で旅立つ意義」 - 海外研修航海へのいざない -
 
  学校法人 東海大学
海外研修航海企画委員会 
企画委員長
総長

松前 達郎
 
 学校法人東海大学では1968年以来、本学所有の海洋調査船「望星丸」を使用した海外研修航海を毎年実施してきました。航空機のよる海外旅行が普通のことであるこの時代に、何故「船」で旅立とうというのでしょう。
 21世紀に入り、我々人類はITに代表されるように高度な科学技術に支えられる傾向が更に強まっています。このような時代では、人類はその多大な恩恵を蒙る一方、物質的な成果が優先され、生身の人間や自然との触合いが減少しつつあります。21世紀に生きる諸君にこそ、「人間として大切なもの」をもう一度見つめ直す旅が必要ではないでしょうか。
 過去32回の研修航海に参加した学生は、延べ2200人を超え、船という限られた空間とそれを取り囲む大海原の中で、教師や留学生そして仲間と寝食を共にし、人生を語り、多くのことを学んできました。参加者の多くは、必ず「陸では味わえない感動や発見があった」と感想を述べています。それは、仲間と一緒に一つのことをやり遂げた達成感であったり、太平洋の真中で満天に輝く星空を見上げて無限の宇宙を肌で感じることができたからかも知れません。参加した者のみが見出すことのできる何かがそこにはあるのでしょう。
 大いなる可能性を秘めた未知なる海。その海を越えて、今、我々は船出しようとしています。それを価値あるものとするのは、学生自身の決断と行動にかかっています。
 未知なる可能性に挑む学生の人生に有意義な経験を付加するべく、第33回海外研修航海の成功を期待しています。