「海」
 
  第33回海外研修航海
団長

砂子 克彦
 
 暗黒の宇宙に浮かぶブルーの惑星・地球の美しさは筆舌に尽くせぬ神秘的美しさがあると言われています。宇宙飛行士でそのあまりの美しさに魅せられて詩人や牧師になった人が何人もいるそうです。何故、地球はかくも美しいのか?
 そして、この大宇宙の中で生命体が存在している唯一の星が地球です。何故、地球に生命が誕生し進化してきたのか?
 それは地球に「海」があるからだといえます。太陽熱で海水が蒸発し水蒸気となって大気中に蓄積され雲となり、やがてそれが雨となって地球に降り注ぎ生命を育んできました。我々にとって最も大切なものの一つ飲料水も原点は海水です。
 前総長・松前重義先生の高邁な建学の精神のもと、人類発展のために海が秘めている可能性を追求すべく全国に先駆けて本学に海洋学部が開設されたのが1962年4月、海洋調査実習船「東海大学丸」が就航したのが同年の5月です。この実習船を使って始まった「海外研修航海」も今回で第33回目を迎え、船も4代目となり初期から比較すると素材の開発やテクノロジーの進歩で想像を絶するハイテク船となっています。
 この間に、幾多の若者たちが海外に飛躍し時代に即応した人生観を養い、国際性を身につけ、それを基盤にそれぞれが今を一生懸命に活躍していると信じております。いま、かけがえのない地球は人口60億の時代を迎え、食料、公害、資源等これまでに経験したことのない危機を迎えつつあります。地球の将来は健全な若者の双肩にかかっていると言っても過言ではありません。
 荒木船長以下望星丸乗組員28名、航海工学科練習学生12名、第33回海外研修団員109名、計149名が2月15日清水港より、45日間、約15,626kmの船の旅に出発します。船の旅は、点と点を結ぶ空の旅とは異なり、大海原を線として、ときには面として辿りながら肌で海を感じる旅になります。日により、場所により、時刻によって変わりゆく大海原の旅は自分を、人生を、世界を、地球を見直す良い機会になると思います。また、意思と目的を持った寄港は、異文化に接し、友情を育み、視野を広げ、国際性を身につける格好の場になることでしょう。
 33年という歳月は人間の尺度で見ると決して短い時間ではありません。みんなで力を合わせ、この世界に類を見ない壮大なスケールと限りなく大きな夢をのせた伝統ある研修航海を存分に楽しみ、最高の成果と思い出が得られることを期待いたします。
 最後に、この航海を細心の心遣いで準備して下さった実行委員のみなさま、また、ご支援して下さった方々に心よりお礼を申し上げ、太平洋の旅へと元気に出発いたします。