翔たけ若人よ大海原に向かって
       
 
  第32回
海外研修航海
    団長 富山薫順
       
 前回乗船してからちょうど10年目に再び乗船する機会を与えていただき非常に嬉しく思っております。前回乗船した時のことを後に次のように書いております。  「あっという間に過ぎ去った48日間であった。毎日船内で高麗鼠のように動き回っていたからであろうか、準備に費やした時間があまりに長かったのでそう感じたのであろうか。清水に帰港して大部分の学生が帰り一段落したとき『もう帰ってきたのか、とにかく事故もなく楽しい航海が出来てよかった』と感じた。あまりにも淡々とした気持ちであり興奮はなかったが満足感はあった。」

 このように私に与えられた仕事の関係で研修学生と十分にコミュニケーションがとれなかったという反省がありましたので、今回はしっかり皆さんとコミュニケーションをとり彼らの生活を見たいと思っています。
 今回の第32回海外研修航海は21世紀最初の行事となりますが、その精神は20世紀のそれと何ら変わるところはありません。しかし、10年前と比べて幾つか大きくかわっていることに気が付きます。
 もちろん、その第一は船です。私たちが前回乗った船は望星丸Ⅱ世でしたが、今回は新造船の望星丸です。一回り大きくなり最新鋭の設備を備えた研修船へとかわりました。
 第二は留学生を積極的に乗船させることになったことです。海外研修航海の基本的な精神は変わらないのですが彼ら留学生が乗船することにより、お互いに国際感覚に磨きをかけ、より豊かな人生経験を可能にしてくれます。

 さて、研修学生の皆さんは学校法人東海大学傘下の大学、短大の学生ですから当然建学の精神については十分に理解していることと思います。もう一つ我々が忘れてはならない重要なものに東海大学の校旗があります。校旗はブルーの生地に真っ白な線が縦横にクロスしています。ブルーは大海原を意味しています。横の線は平和、愛情を、縦の線は正義、理性を意味しています。この二本の線の交わるところに真理はあると創立者松前重義博士は説かれています。この校旗に込められた意味をもう一度船内で考えてみましょう。

 皆さんは学生である以前に既に立派な社会人です。現代社会において礼儀、他人を思いやる心、自己の制御、他との協調、協力等が失われつつあり大きな社会問題となっています。これら人間としての必修条件無くして社会人として活動し、人生を歩んでいくことは出来ません。ましてや、海外研修航海は成立しないのです。第31回海外研修航海より留学生も参加するようになり益々上で述べたことが重要となってきます。東海大学の校旗のもとに、地域を越え、人種を越え、宗教を越え人間は皆地球人であることを自覚して海外研修航海に臨みたいものです。
 最後になりましたが上の標語は第23回海外研修航海団役員で考えたものです。私はとても気に入っており今回のタイトルとさせていただきました。