学校法人東海大学
海外研修航海企画委員会
企画委員長
総 長
松前 達郎
 

海外研修航海へのいざない

学校法人東海大学は、1968年以来、本学所有の海洋調査研修船「望星丸」を使用した海外研修航海を毎年実施してきました。航空機による海外旅行がごく普通のこととなった今日、何故「船」で「旅立とう」というのでしょう。
 今世紀ほど科学技術の進歩が早く、また人類がその恩恵を蒙った時代はありません。一方、その進歩により物質的な成果が優先され、様々な社会の歪みが生まれてしまいました。21世紀を迎えるにあたり、便利な日常生活の中で見失いがちな人間として大切な何ものかを、もう一度見つめ直す旅が必要なのではないでしょうか。
 第31回海外研修航海はポンペイから、赤道を越えてフナフチ、サモア、タヒチ、ボラボラ、マジュロの島々を訪問する45日間の航海を行います。この航海は、もちろん単なる旅行ではありません。
洋上では英会話講座、寄港地予備調査などを通じて外国の歴史・文化・諸事情を学び、各地を訪れそれらを肌で感じながら体験します。今回は、本学で学ぶ留学生も参加するという新しい試みが行われます。日本とは違う環境で同じ時代に生を受けた仲間の参加は、研修航海をさらに実りあるものにしてくれるでしょう。
 過去30回の研修航海に参加した学生は、延べ2000人を超えます。船という世界とそれを取り囲む大自然の中で、教師や仲間と生活を共にし、人生を語り、多くのことを学んできました。
これまで本航海に参加した学生たちは、必ず「陸では味わえない感動や発見があった」と感想を述べています。それは、仲間と一緒に一つのことをやり遂げた達成感であったり、苦楽を共にした仲間ができたことなのかもしれません。あるいは、太平洋の真ん中で、満天に輝く星空を見上げて無限の宇宙を感じることができたからかもしれません。すなわち参加した者のみが見出すことのできる何かがそこにはあるのです。
 大いなる可能性を秘めた未知なる海、その海を越えて、今、我々は可能性に向け船出しようとしています。それを価値あるものとするかは、学生自身の決断と行動にかかっています。
 未知なる可能性に挑み、学生たちの人生に有意義な経験を付加すべく、この研修航海に期待します。