今回の航海はよく揺れた。2月16日に清水港を出港するやいなや揺れ始め、南太平洋航海中もよく揺れた。最後の寄港地マジュロから清水帰港までもまたまたよく揺れた。
けれどこの揺れの中で、全てが交じり合い、協調し、認め合い、融合されて我々の研修航海ができあがった。
揺れる船内で体験した通常の学生生活とは違う非日常的なこと、例えば"制限された狭い生活空間"、"水をはじめとした生活消耗品等の使用制限"、"団体生活での時間厳守"、それらに研修学生の皆さんは果敢にチャレンジしてくれました。自分のわがままを押さえ、自分の生活のテンポを変えてお互いに協力していく、その過程で自分とは違う他人という存在を認め、その個性を受け入れたからこそ、その成果として沢山の友人を得ることができたのでしょう。またその時に、新しい自分の一面を見つけ、自己の再発見をしたことでしょう。
私は他の個性を認めるということが、自分と違う人間、さらには異文化、他言語、固有の生活習慣等を認めることにつながり、ひいては国際理解への第一歩になると常々思っています。
よって今回はじめて6カ国からの協定留学生達が研修に参加しましたが、彼らもすぐに仲間となり、日本人学生となんらかわりの無い一つの個性として、沢山の友達をつくってくれました。国際交流で一番大切なのは、UnderstandとAcceptなのです。
船から寄港地に上陸すると、また別な非日常に出会うことになりました。そこには日本の社会が遠い過去に置いてきてしまったであろう、大切なものがあったのかも知れません。それはきっと現地の子供の笑顔、豊かな表情に象徴されるものでもあったでしょう。甲板から見た南太平洋の透き通るような海が、子供達のまさに笑顔の中に、瞳の中にありました。
研修学生の皆さんが南太平洋の島々で、それぞれ人間として忘れてはならないもの、そのいくつかを掴んでくれたと確信しています。
研修中に企画していた各種行事は、全員一丸となって驚くほど積極的に取り組み、色々なアイデアと共同作業で素晴らしい成果を挙げてくれました。加えて、とても厳しい自己評価をし、そしていつの間にか、共同生活で発生した問題も、自分達で解決できるようになっていきました。みんな人間として成長し、はじめて会った時より一回り大きくなったと感じられ、団長として感無量のひとときでした。
ところで日本に帰港して、今も感じてしまうのは、我々の日常は多くを無駄にしているということで、きっと研修学生の皆さんも同じように感じてくれていると思います。45日間の非日常を経験して日常が非日常に変化したのです。日常と非日常は表裏一体、各自の意識と認識さえしっかりして、ほんの少しのチャレンジ心があれば、いつでも乗り越えられるものなのです。
最後にこの揺れた航海では、大分船酔いに悩まされたが、特に事故も無く無事に研修団が帰港することができたことは、団長として一番大事な責務を果たせたといえ、それを支えてくれた研修団の皆さんと、望星丸の船長以下乗組員の皆様に感謝いたします。
またこの場をかりて、第31回海外研修航海のホームページにアクセス戴いた皆様に御礼申し上げます。
|